・・・西向きの一室、その前は植込みで、いろいろな木がきまりなく、勝手に茂ッているが、その一室はここの家族が常にいる室だろう、今もそこには二人の婦人が…… けれどまず第一に人の眼に注まるのは夜目にも鮮明に若やいで見える一人で、言わずと知れた妙齢・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・王侯や富者の家族においても、従者や奴隷の家族においても、その点は同じであった。 フロベニウスはそこに教養の均斉を見いだした。上下がこれほどそろって教養を持っているということは、北方の文明人の国にはどこにもない。 が、この最後の「幸福・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
・・・多くの富豪や華族は真に「家庭」と呼び得べき者を有せぬ。彼らは経済学の見地に立てば社会の宝玉である。精神的観察よりすれば社会の悪毒である。皮相なる形式的道徳は「金持ち」にとって最も破りやすい。金持ちはついに人道を踏みはずす。吾人は自覚ある平和・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫