・・・知られている通り彼女は中宮定子の官女として宮廷生活をしていたのであったが、この中宮の生涯はあわれの深いところがあって、はじめの頃は華やかなあけくれで内外に大きな勢力もおよんでいたが、後には権力ある外戚藤原氏が奉った他の女人が当時の事情として・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
・・・その必要から、自分の娘たちの身辺を飾り宮廷社会の陰険な競争に対してよく備え暗黙の外交的影響と文化の力で、娘の勢力を確保するために才智の優れた、性格にも特色のある婦人達を官女として集め、宮中の人気を集注し、社交的なあらゆる場面で勝利を占めよう・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・最近一か年の露国の急激な変化すらも、毎日の新聞電報に注意を払っているものにはともすれば緩徐に過ぎるごとく感ぜられるのである。戦争のもたらした残酷な不具癈疾、神経及び精神の錯乱、女子及び青年の道徳的頽廃、――これらの恐ろしかるべき現象も、ただ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫