・・・この話は「続武家閑話」に拠ったものである。佐橋家の家譜等では、甚五郎ははやく永禄六年一向宗徒に与して討死している。「甲子夜話」には、慶長十二年の朝鮮の使にまじっていた徳川家の旧臣を、筧又蔵だとしてある。林春斎の「韓使来聘記」等に・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
・・・宣教師に対して、禁教緩和の望みがあるような印象を与えたのは、彼とその子息の上野守なのである。一向宗の狂信が依然として続いていたとすれば、おそらくこういう態度を取ることはできなかったであろう。したがって帰参のころには一向宗の熱は醒めていたと推・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・純一君の場合は、母親がこの緩和につとめないで、むしろ父親の癇癪に対する反感を煽ったのではなかろうか。そのために、年とともに消えて行くはずの折檻の記憶が、逆に固まって、憎悪の形をとるに至ったのではなかろうか。そうだとすれば、漱石夫妻の間のいざ・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫