・・・このように沈下した精神状態は、心理学の教科書によらずとも、およそ外界の事件に対して共感、同情のひき起され難いものであることは明らかではないかと思われる。 久内は自分を、雁金というドン・キホーテについてゆくサンチョであるというが、サンチョ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・その原因について、男の文学者の或る人は、女性の社会感覚がせまいことがかえって幸して、主観のうちにとらえられている主題を外界に煩わされずに――荒々しい社会性に妨げられずに一意専念自分の手に入った技巧でたどってゆくから、この文学荒廃の時期に、婦・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・「作家はその不調和を外界と人間の衝動の中にあとづけることによって、美という仮りの調和体を作ることしか出来ない」ものとして受取っている。ジェームス・ジョイスやD・H・ローレンスから多くのものを摂取して来た一人の日本の文学者として、以上の言葉は・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・この瞬間には彼女は自己というものを離れ去り、また外界の何物にも累わされずに、衝動が活くままの行動をする。この内部の力に対しては自分も非常な恐怖を抱いていながら、その魔力に抵抗することはできないのだ。これがデュウゼをして半狂のヒステリカルな女・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫