・・・椽がなく、障子一つで外気を防いでいるためだろう。日本の障子の風情を愛すのはピエル・ロティとヨネ・野口に止まらぬ。けれども寒いので私は風邪をひいた。一日、ホット・レモンを飲んで床についたが、無惨に高い天井を眺めているうちに思ったことがある。そ・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・思う存分に手も伸ばし肢も背ものばし、外気と日光と爽やかな風の流れの欲しいのが自然だろうと思う。勝手に体を屈伸させ、さぞ跳ねたりもしたいだろう。肉体の健やかな自然の要求はそこに在る筈である。 仕舞は、整えられ美とされている線であるにしろ、・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・そして、或る雪の降る日、自分の息苦しい生活から、雪の外気へとび出るような気持で家を出て、芝白金の方のかの子さんの家をさがした。坂の裏側の町筋へ出てしまったかで、俥が雪の細い坂をのぼれず、妙なところでおりて、家へ辿りついた。小ぢんまりしたあた・・・ 宮本百合子 「作品の血脈」
・・・其処へ六時頃、父上が、外気の寒さで赤らんだ顔を上機嫌にくずし乍ら、「どうですね、仕度は出来ましたか」と、何か紙包を持って帰宅されるだろう。 私や父は、いつも、家中の者に、何か一つずつ、気に入りそうな贈物を買い調えた。自分は早くか・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・右のような時刻には、外気が冷たくなり、蕾の内部の気温との相対的な関係が、昼間と逆になるはずである。何かそういう類の微妙な空気の状態が、蓮の開花と連関しているのかもしれない。その点から考えると、気温の最も低くなる明け方が、最も開花に都合のいい・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫