・・・「わっはっはっは、わっはっはっは、ホッホウ、ホッホウ、ホッホウ。がやがやがや……。」「やかましい。きさまら、なんだってひとの酒のことなどおぼえてやがるんだ。」清作が飛び出そうとしましたら、画かきにしっかりつかまりました。「第九と・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・ みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指さしました。一郎はしばらくそっちを見ていましたが、やがて鞄をしっかりかかえて、さっさと窓の下へ行きました。 みんなもすっかり元気になってついて行きました。「だれだ、時間・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指しました。一郎はしばらくそっちを見ていましたがやがて鞄をしっかりかかえてさっさと窓の下へ行きました。みんなもすっかり元気になってついて行きました。「誰だ、時間にならなぃに教室へは・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・するともう子どもらは、がやがや云い出して、みんな水に飛び込んでしまった。 しゅっこは、しばらくきまり悪そうに、しゃがんで水を見ていたけれど、とうとう立って、「鬼っこしないか。」と云った。「する、する。」みんなは叫んで、じゃんけんをす・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・もうみんな、がやがやがやがや言って、なにがなんだか、まるで蜂の巣をつっついたようで、わけがわからなくなりました。そこでやまねこが叫びました。「やかましい。ここをなんとこころえる。しずまれ、しずまれ。」 別当がむちをひゅうぱちっとなら・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
奇妙な夢を見た。女学校の裁縫の教室と思われる広い部屋で、自分は多勢の友達と一緒にがやがやし乍ら、何か縫って居る。先生は、実際の女学校生活の間、所謂虫がすかなかったのだろう、何かとなく神経的に自分に辛く当った音楽の先生である・・・ 宮本百合子 「或日」
・・・あわれなうじ虫共は口惜しまぎれの法王にそそのかされて裏に裏の心はようもさぐらいで只がやがやとわめいて居る――王の亢奮した神経はあたりの静けさにつれて次第にしずまって来る。しずかに考え深く。王 只らちものうさわぎたてる愚・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・ 浮々した年増の声が、がやがや云う男の間に際立って響いた。丸髷のその女を先頭にフロック・コート、紋付袴の一団が現われた。真中に、つい先年首相であった老政治家が囲まれている。皆、酒気を帯び、上機嫌だ。主賓、いかにも程々に取巻かせて置くとい・・・ 宮本百合子 「百花園」
・・・狭い、長い廊下に人が押し合って、がやがやと罵る。非常な混雑であった。 四畳半には鋭利な刃物で、気管を横に切られたお蝶が、まだ息が絶えずに倒れていた。ひゅうひゅうと云うのは、切られた気管の疵口から呼吸をする音であった。お蝶の傍には、佐野さ・・・ 森鴎外 「心中」
・・・役所帰りらしい洋服の男五六人のがやがや話しながら行くのにあった。それから半衿のかかった着物を着た、お茶屋のねえさんらしいのが、なにか近所へ用たしにでも出たのか、小走りにすれ違った。まだ幌をかけたままの人力車が一台あとから駈け抜けて行った。・・・ 森鴎外 「普請中」
出典:青空文庫