・・・明治初年から興隆期にかけてのごく短い期間は、日本のインテリゲンツィアも知的進歩性は摩擦少なく興隆する支配力と共にあり得たのであったが、現在では、真実の知性は社会的矛盾を観破し、帰趨を明らかにするが故に、知識人に対しても民衆に対しても、許可す・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・それらの人々が、大衆の中での活動で身につけて来ている階級の具体的な特徴についての把握、複雑な現実の縺れの間に歴史の帰趨を見抜く力、その積極的な押し進めのためにあり得る人間の力についての洞察によって、今日の現実を観察して描いてゆく。その点でブ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・作家として、自己の帰趨に迷ったブルジョア作家の一部は、この退潮を目撃して、文芸復興の呼び声を高く挙げ、爾来この二三年間は古典の研究、リアリズムの問題、純粋小説の提唱、能動的・行動的精神の翹望が次々に叫ばれつづけて来たのであるが、文学の実際の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・この頃の娘さんたちというひっくるめての表現は、いきなり極めて動的な感じでうって来て、娘さんたち自身にしろ内と外とから二六時ちゅう動いていて、しかもそこに何かの帰趨を見出して行こうとしている自分たちの心持、生きかたを、手際よくまとめて答えるこ・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・世代は一般的に年齢が若いだけの必然によって、そういう歴史の上での逆行は本然的に不可能であると感じており、しかも一方にはますます逼迫する経済事情、自由な空気の欠乏などが顕著であり、生活態度全般にわたって帰趨に迷うとともに、恋愛、結婚の問題につ・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
終始末期を連続しつつ、愚な時計の振り子の如く反動するものは文化である。かの聖典黙示の頁に埋れたまま、なお黙々とせる四騎手はいずこにいるか。貧、富、男、女、層々とした世紀の頁の上で、その前奏に於て号々し、その急速に於て驀激し・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫