・・・る植民地の拡大と、その結果、より速い資本主義社会への足なみをもったイギリスで、シェクスピアの豊富な才能が、思いをこめてじっと動かず微笑するレオナルドの女性を解放し、ヴァレンタインの一夜、アテナの二人の貴女を郊外の森へ駈け落ちさせたことは、注・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・考えて見ると――貴女はそう思いませんか?人間そのものが芸術であると、思う。音楽や、絵や、建築、文学が、皆我々の、皮膚の下、髪の裡、眼の底にある。それ故、時に 魂が熱し鳴りひびきどうにも 仕方のない時が あ・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・日記をかくようにたくさんの詩をかけよ手紙をかくようにたくさんの詩をかけよ 時々刻々に書き書けば成りがたい彫心縷骨の一篇よりも更に山があり谷があり貴女の姿のまるみのみえる逆説的の不思議はそこに普段着のごと・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・「それで?――誰かに診せたの」「まだ」「そんなことってあるものか」 総子は、大きな怒ったような声を出した。「貴女がついててそんな!」「だからね、明日行ったら私自分で手筈するわ、もう親父さんはあてにしないで、ね」 ・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
出典:青空文庫