・・・日本の軍事基地化に反対なのは、アジアとヨーロッパの平和がなければ、日本の人民の生活安定があり得ないからです。 北京で開かれようとしているアジア婦人大会に、日本代表が出席できるかどうかにかかわらず、世界の平和のためには日本の婦人も彼女たち・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・落付いて身の振方はつけさせず、類で誘ない、数で誘って、危地へすらりとかたまらせる。――舷に手をかけ、救けを求める奴なぞは叩き沈めろ! 孕み女が転んだとて、容赦なんぞはいるもんか。ヴィンダー ――ところで、妙な軍装の奴が現れたぞ。今のとこ・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・謡は謡ですんで、内田さん、芥川さん、互に恐ろしくテムポの速い、謂わば河童的――機智、学識、出鱈目――会話をされた。どんな題目だったかちっとも覚えていない。感心したり、同時にこの頃の芥川さんは、ああ話す好みなのかと思って眺めた感じが残っていま・・・ 宮本百合子 「田端の坂」
・・・ この毅然とした数行には、この作家が断定しにくい問題に対したときに示す機智・燕がえしの修辞法は一つもない。真正面から、歴史の現実は、かくある、という事実を憚らず語っている。これは文学の言葉である。同時に政治の言葉でもある。なぜなら、政治・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・ 戦争挑発に反対して平和を守ろうとする闘いと民族の独立、日本が軍事基地化されることに反対する男女の声は、文化・学問の自由を守る要求とともに科学者文学者のひろい層の発言となった。文学者の平和を守るための動きは、労働者階級の平和擁護の運動と・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・彼女の剛毅、機智、大衆から与えられている輿論の支持を全面的に用いて、ナイチンゲールの官僚主義とのたたかいはつづけられていたが、シドニー・ハーバートが病いに倒れるとともに政治的な敗北が、役所方面での彼女の計画をほとんど旧態に戻してしまった。苦・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・それと共に、フランス小唄のうまい、美食家の、「美しく煙草を吸い、奇智にとんで、男の知人を揺ぶる」ことのやめられない貴族学校出のオリガとの生活は、彼を歩いて来た道から脱する力をもっていることを理解しはじめた。ゴーリキイはオリガとしっかり抱き合・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・おだやかにまとめる、それが女の機智と手腕とされているのだ。けれども、放蕩な良人をもつ妻が、敏捷に良人の気分を察して、今夜は芸者と遊びたいと思っていると見てとれば丸髷に結って純日本風の化粧をする。きょうはバアを恋しがっていると思えばいち早く洋・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ 私たちは、そんな辛苦はつまらないと五百円の収入の男を夫としようとするのではなく、その辛苦のつまらなさのも一つ先の社会の波までも見透して、機智とユーモアをも失わず自分たちの幸福を守ってゆこうとしているのだと思う。 いつか婦人の生活と・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
・・・ それにしても、パリへ二度もゆき、フランス小唄のうまい、美食家の「美しく、煙草を吸い、奇智に富んで、男の知人をゆすぶること」がやめられない貴族女学校出のオリガに、何故ゴーリキイは卒倒する迄ひきつけられたのであったろう。ゴーリキイは単に雌・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫