・・・自分は、ハンデキャップを認めません。体当りで来た時には、体当りで返事をします。 今日は、君の作品に就いてだけ申し上げました。君のお手紙の言葉に対しては、次の機会にゆっくりお答えしたいと考えています。君の二通の手紙は、君の作品に較べて、ひ・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・自分は、ハンデキャップを認めません。体当りで来た時には、体当りで返事をします。 今日は、君の作品に就いてだけ申し上げました。君のお手紙の言葉に対しては、次の機会にゆっくりお答えしたいと考えています。君の二通の手紙は、君の作品に較べて、ひ・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・いつか、私の高等学校時代からの友人が、おっかなびっくり、或る会合の末席に列していて、いまにこの辺、全部の地区のキャップが来るぞと、まえぶれがあって、その会合に出ているアルバイタアたちでさえ、少し興奮して、ざわめきわたって、或る小地区の代表者・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・いつか、私の高等学校時代からの友人が、おっかなびっくり、或る会合の末席に列していて、いまにこの辺、全部の地区のキャップが来るぞと、まえぶれがあって、その会合に出ているアルバイタアたちでさえ、少し興奮して、ざわめきわたって、或る小地区の代表者・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・金持の子というハンデキャップに、やけくそを起していたのだ。不当に恵まれているという、いやな恐怖感が、幼時から、私を卑屈にし、厭世的にしていた。金持の子供は金持の子供らしく大地獄に落ちなければならぬという信仰を持っていた。逃げるのは卑怯だ。立・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・金持の子というハンデキャップに、やけくそを起していたのだ。不当に恵まれているという、いやな恐怖感が、幼時から、私を卑屈にし、厭世的にしていた。金持の子供は金持の子供らしく大地獄に落ちなければならぬという信仰を持っていた。逃げるのは卑怯だ。立・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・というハンデキャップは、殆ど暴力と同じくらいに荒々しいものである。例えば、私が、いま所謂先輩たちの悪口を書いているこの姿は、ひよどり越えのさか落しではなくて、ひよどり越えのさか上りの態のようである。岩、かつら、土くれにしがみついて、ひとりで・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・というハンデキャップは、殆ど暴力と同じくらいに荒々しいものである。例えば、私が、いま所謂先輩たちの悪口を書いているこの姿は、ひよどり越えのさか落しではなくて、ひよどり越えのさか上りの態のようである。岩、かつら、土くれにしがみついて、ひとりで・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・病躯の文章とそのハンデキャップに就いて 確かに私は、いま、甘えている。家人は私を未だ病人あつかいにしているし、この戯文を読むひとたちもまた、私の病気を知っている筈である。病人ゆえに、私は苦笑でもって許されている。 君、か・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・病躯の文章とそのハンデキャップに就いて 確かに私は、いま、甘えている。家人は私を未だ病人あつかいにしているし、この戯文を読むひとたちもまた、私の病気を知っている筈である。病人ゆえに、私は苦笑でもって許されている。 君、か・・・ 太宰治 「もの思う葦」
出典:青空文庫