・・・こうした、数々の場合に際会するたびに、深く頭に印象されたものは、貧民を相手とする商売の多くは、弱い者苛めをする吸血漢の寄り集りということでした。 第一質屋がそれであります。合法的に店を張っているには相違ないけれど、苦しい中から、利子を収・・・ 小川未明 「貧乏線に終始して」
・・・なんでも紙撚だったか藁きれだったか忘れたが、それでからだのほうぼうの寸法を計って、それから割り出して灸穴をきめるのであるが、とにかく脊柱のたぶん右側に上から下まで、首筋から尾びていこつまでたしか十五六ほどの灸穴を決定する。それに、はじめは一・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・仕事があっても、これでは儲けが皆組へ行ってしまって、会社は益々貧血するので、あるところに廃工場となっていたのを復活させて、それを組にやって、吸血をまぬかれたというのである。組の現場監督の下の親父と、その下につかわれている労働者たちとの関係は・・・ 宮本百合子 「くちなし」
出典:青空文庫