・・・ ずいぶん日本のそういうところと様子が違うでしょう? ソヴェト同盟では小学校からズッと生徒に自分たちの力で級の仕事をやってゆくように育てられています。 級長なんかというスマした優等生が、先生の小さい出店みたいなことをするのではな・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・ 級長なども、これ迄は、どんな工合に選んでいたのでしょうか。先生が指名しましたか。其とも級として自由に選んだでしょうか。級として自由に選ぶことが出来たのなら、自分たちの選んだ級長にあき足りない点があるとき、それはとりも直さず、そういう不・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ 一汗小母さんがかいて自分の賞品のわきへどくと、音楽は一寸止み、今度は火花の散るような急調な舞踏曲がはじまった。踊り達者で名うてのオリガが、重い防寒靴をはいているとは信じられない身軽さで、つと輪の真中にでた。機械工体育部水泳選手のドミト・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・日本が、本当の自由主義時代を持たず、しかも急調に今日に至っていることに思い及べば、今日の或る種の女の中にあるこのようなポーズがどういう性質の歴史的混合物であるかは自ら明瞭ではないだろうか。 パラマウントが日本へ来て撮影して行った日本・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・小倉の雪の夜に、戸の外の静かな時、その伝便の鈴の音がちりん、ちりん、ちりん、ちりんと急調に聞えるのである。 それから優しい女の声で「かりかあかりか、どっこいさのさ」と、節を附けて呼んで通るのが聞える。植物採集に持って行くような、ブリキの・・・ 森鴎外 「独身」
・・・話を初めると美しいことばが美しい動作に伴なわれて、急調に、次から次へと飛び出して来る。 舞台に上る三時間は彼女の生活の幕間なのである。彼女は生活の全力を集めて舞台に尽くしているのではない。意味のあるのは舞台外の生活だ。……美しい手で確乎・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・時々あの高い声の独唱が繰り返されるのも、そのたびごとにいくらか合唱が急調になって行くのも、皆彼らの歓喜をあおるとともに、彼らの信仰を刺激し強めないではいない。音楽の力はただ仏の力として彼らに受け取られるのである。 音楽に陶酔した彼らは、・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫