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・・・三七日の夜半に観音は、子種のないことを宣したが、長者は観音に強請して、一切の財産を投げ出す代わりに子種を得るということになった。やがて北の方は美しい玉王を生んだが、その代わり長者の富はすべて消えて行った。長者は北の方とただ二人で赤貧の暮らし・・・
和辻哲郎
「埋もれた日本」
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・・・ 私はこの蓮華の世界に入り浸りながら、ここまでいくぶんか強制的に引っ張って来てくれた谷川君に心から感謝した。 そういう印象を受けたのは、ほのぼのと夜が明けて来て、広い蓮池が見渡せるようになった時であるが、それが何時ごろであったか・・・
和辻哲郎
「巨椋池の蓮」