・・・自分も偶然に津田君の画とこの露文豪のある作品との間に共軛点を認めさせられている。殊に彼の『イディオット』の主人公の無技巧な人格の美に対して感じるような快感を津田君の画から味わい得られる。そして真率朴訥という事から出て来る無限の大勢力の前に虚・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・これは暫時細君を交易することなり。 孔子様は世の風俗の衰うるを患て『春秋』を著し、夷狄だの中華だのと、やかましく人をほめたり、そしりたりせられしなれども、細君の交易はさまで心配にもならざりしや、そしらぬ顔にてこれをとがめず。我々どもの考・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・また或は各地の固有に有余不足あらんには互にこれを交易するも可なり。すなわち天与の恩恵にして、耕して食い、製造して用い、交易して便利を達す。人生の所望この外にあるべからず。なんぞ必ずしも区々たる人為の国を分て人為の境界を定むることを須いんや。・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・モラトリアム発表前の十六日、正金銀行で、課長以上の行員たちが殆ど全部現金を五円札に代え、前交易営団総務課長は、二十万円の金を五円札で引き出したという事実である。おそらく、現にその手で事務を取らざるを得なかった同じ銀行の者が、その投書をかいて・・・ 宮本百合子 「人間の道義」
・・・ルッテンベルグ協約で英国はヨルダン水力電気利権を得た。死海協約でおよそ八十億ポンドの塩を英国は死海から儲けるであろう。パレスタインで農業をしていた先住アラビア人は多く土地を奪われた。ジオニスト政策は猶太人労働者を労働貴族にした。「パレスタイ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫