・・・それから銅を灼くときは孔雀石のような明るい青い火をつくる。こんなにいろはさまざまだがそれはみんなある同じ性質をもっている。さっき云ったいつでも動いているということもそうだ。それは火というものは軽いものでいつでも騰ろう騰ろうとしている。それか・・・ 宮沢賢治 「学者アラムハラドの見た着物」
・・・向うの海が孔雀石いろと暗い藍いろと縞になっているその堺のあたりでどうもすきとおった風どもが波のために少しゆれながらぐるっと集って私からとって行ったきれぎれの語を丁度ぼろぼろになった地図を組み合せる時のように息をこらしてじっと見つめながらいろ・・・ 宮沢賢治 「サガレンと八月」
・・・りんどうの花は刻まれた天河石と、打ち劈かれた天河石で組み上がり、その葉はなめらかな硅孔雀石でできていました。黄色な草穂はかがやく猫睛石、いちめんのうめばちそうの花びらはかすかな虹を含む乳色の蛋白石、とうやくの葉は碧玉、そのつぼみは紫水晶の美・・・ 宮沢賢治 「虹の絵具皿」
・・・ 浅草が豚の油でといた紅のような気のするのと、 染井の墓地に行くまでの通りの、孔雀石をといてぬった青のような気がするのと、 京橋のわきの岸が刺青のような色をして居るようなことだけは感じて居る。 フランネルで作った・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫