・・・そして、お雪さんの言葉に激まされたように、ぐたぐたと肩腰をゆすって、逆に、のたうちました。 ひとりでに、頭のてっぺんへ流れる涙の中に、網の初茸が、同じように、むくむくと、笠軸を動かすと、私はその下に、燃える火を思った。 皆、咄嗟の間・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・ある日、昔の遊び友達に会い、誘われると、もともと好きな道だったから、久しぶりにぐたぐたに酔うた。その夜はさすがに家をあけなかったが、翌日、蝶子が隠していた貯金帳をすっかりおろして、昨夜の返礼だとて友達を呼び出し、難波新地へはまりこんで、二日・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・外では雪に日が照って豚はまぶしさに眼を細くし、やっぱりぐたぐた歩いて行った。 全体どこへ行くのやら、向うに一本の杉がある、ちらっと頭をあげたとき、俄かに豚はピカッという、はげしい白光のようなものが花火のように眼の前でちらばるのを見た。そ・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
出典:青空文庫