・・・わたしも一九三二年四月七日に検挙されて六月十八日ごろまで、警察にとめられていた。小林多喜二、宮本顕治は不自由な生活と活動の条件にかかわらずどこかでずっと無事に暮していた。同じ年の九月「コップ」の婦人協議会がそっくりつかまって、わたしはまた一・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・けれども、人間の歴史の嶮しい波の中での女の生きる姿という広さにおいてみれば、彼女が少女時代から歩んだ道は、彼女自身によっても個人的閲歴の域を溢れた意義をもって見られても、本来の謙虚を傷つけることではなかったろう。キュリー夫人が独特の性格で、・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・ それらと闘いぬいて出て来ると、敵は何とかケチをつけるため、父親が一札を入れたおかげで出されたのだとか、あやまったからだとか「今回の検挙によって思想上に一転機を来した」から釈放されたとか、ブル新聞に書き立てさせる。文化活動者として私をわれわ・・・ 宮本百合子 「逆襲をもって私は戦います」
・・・ひっくるめて、三・一五といってしまえば、そのなかには今日私たちがはっきり敵として理解しなければならぬ人々をもふくんでいるのであるから三・一五を記念するならば、三・一五の検挙を通じて今日まで一貫して勤労階級の解放のために闘いつづけている人々を・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・その婦人はそういう親切を咎められて検挙もされた。今日そのひとは、どんな記念賞の晴れ役にもならず混雑した室の小さい机に向って地味に民衆のために働いているのである。〔一九四六年八月〕 宮本百合子 「行為の価値」
・・・空は円く高く 地は低く凹凸を持ち人は、頭を程よい空間に保ってはじめて二つの心が、謙虚な霊を貫くのだ。 心自由に 自由に何処までも 行こうとする心。十三の少年のように好奇に満ち、精力に満ち・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・前年五月中旬検挙された百合子は、十月下旬治安維持法によって起訴され、市ヶ谷刑務所未決に収容された。一九三六年一月三十日、父中條精一郎が死去した。百合子は五日間仮出獄した。ふたたび市ヶ谷にかえり予審中、二・二六事件が起った。三月下旬、保釈とな・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・一ヵ月あまりののち、プロレタリア文化団体に対する全面的弾圧がはじまって、四月七日、顕治は非合法生活に入り、百合子は検挙された。そういう事情のために百合子の入籍手続がおくれていた。[自注6]壺井さん、栄さん――壺井栄。[自注7]島田の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・十二月二十四日開催の第七十三議会に先立つこと九日の十五日に日本無産党・全評を中心として全国数百人の治維法違反容疑者の検挙が行われ、議会に席を有する加藤勘十、黒田寿男氏等は何日も経ず起訴された。被検挙者中には、大森義太郎、向坂逸郎、猪俣津南雄・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 人はよりよきもの、よりよき如何なる些細なものに対しても、無我に謙虚である事はよろしゅうございます。そうでなければなりません。然し、考えなければならない事は、無我の謙虚と云う事と、理智の催眠させられた感情的称嘆とその事との間には大きな差・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫