・・・前に、日本の新しいファシズムの一つの現れとして、ルポルタージュに名をかりた戦記もの、秘史に名をかりた皇道主義軍国主義の合理化的宣伝の出版物が急にましてきていることにふれましたが、日本の人民的な文化の下地というものは、実に中国や昔のロシヤとち・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・いきな模様の裾長い着物に好きでかつら下地にばかり結って居た様子はそのお白粉気のないすき通るほどの白さと重そうに好い髪とで店の若いものがせめてとなりの娘だったら附文位はされようものと云ったほどの、美くしさをもって居た。 十六の時自分の名が・・・ 宮本百合子 「お女郎蜘蛛」
・・・は無理であるけれども、同時代の専門家によって作られる作品を、自分の階級の芸術として一般のプロレタリアートが鑑賞し、再吟味し、果して自分達の生活を再現している芸術かどうかについて、少くとも批判するだけの下地と余裕とは、もう充分つくられて来てい・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・一時頃まで私はあの人のかつら下地に結ったかお、引眉毛の目つき、を思って居た。 ウトウトとして目をさましたら七時頃だった。すぐとびおきて私は、退紅色と紅の古い紙に包んだ鏡と、歌と、髪の毛をもってあの人の家にかけて行った。あの人はよそに出て・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
・・・中国は中国、日本は日本、をファッショの立場から主張する文化的下地を最もよくつくるのは、国際的主題によるらしく見えるブルジョア民族主義文学だ。 ブルジョア勃興期に、ブルジョア文学の異国趣味は植民地発見熱の反映として現れた。没落期に入ると一・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・の一言で聞き捨て、見捨て、さて陣鉦や太鼓に急き立てられて修羅の街へ出かければ、山奥の青苔が褥となッたり、河岸の小砂利が襖となッたり、その内に……敵が……そら、太鼓が……右左に大将の下知が……そこで命がなくなッて、跡は野原でこのありさまだ。死・・・ 山田美妙 「武蔵野」
出典:青空文庫