・・・』などは、げろが出そうだ。どうやら『先生』と言われるようになったのが、そんなに嬉しいのかね。八卦見だって、先生と言われています。どうやら、世の中から名士の扱いを受けて、映画の試写やら相撲の招待をもらうのが、そんなに嬉しいのかね。此頃すこしは・・・ 太宰治 「或る忠告」
・・・兄貴が造えて不当の利益を貪って居るのを、此の眼で見て知って居ながら、そんな酒とても飲まれません。げろが出そうだ、と言って、お酒を飲むときは、外へ出てよその酒を飲みます。佐吉さんが何も飲まないのだから、私一人で酔っぱらって居るのも体裁が悪く、・・・ 太宰治 「老ハイデルベルヒ」
・・・「猫撫で声は、よしてくれ。げろが出そうだ。はっきり負けた奴に、そんなに優しくお説教をはじめるのは、いい気持のものらしいね。」佐伯は、顔を不機嫌にしかめて、強く、吐き出すように言い、両腕をぐったりテエブルの上に投げ出した。手が附けられぬく・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・にはゲエテを気取り、ゆうべにはクライストを唯一の教師とし、世界中のあらゆる文豪のエッセンスを持っているのだそうで、その少年時代にひとめ見た少女を死ぬほどしたい、青年時代にふたたびその少女とめぐり逢い、げろの出るほど嫌悪するのであるが、これは・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・たいへんな、これは、ロマンチシズムだ。げろまで吐いちゃった。憤怒をさえ覚えて、寝床を蹴って起き、浴場へ行って、広い浴槽を思いきり乱暴に泳ぎまわり、ぶていさいもかまわず、バック・ストロオクまで敢行したが、心中の鬱々は、晴れるものでなかった。仏・・・ 太宰治 「八十八夜」
・・・この岩はまだ上流にも二、三ヶ所学生は何でももう早く餅をげろ呑みにして早く生きたいようにも見えまたやっぱり疲れてもいればこういう款待に温さを感じてまだ止まっていたいようにも見えた。(ええ、峠まで行って引っ返して来て県道を大船渡(今晩の・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・お前さん、今行ってすぐ掛げろって言ったけぁか。」爾薩待「それは言った。言ったけれども、君たちのやったようでなく、噴霧器を使わないといけないんだ。」農民一「虫も死ぬ位だから陸稲さも悪いのでぁあるまぃが。」農民二「どうもそうだようだ・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
出典:青空文庫