・・・quemoo の原形 quemal の訳は単に「生きる」というよりも「飯を食ったり、酒を飲んだり、交合「じゃこの国にも教会だの寺院だのはあるわけなのだね?」「常談を言ってはいけません。近代教の大寺院などはこの国第一の大建築ですよ。ど・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・ たとえ、今日洋装の書物が、耐久性からいっても、趣味の上からしても殆んど永久の蔵書に値しないかもしれぬが、なほ優に二三十年間は、原型をとゞむるでありましょう。 かりに、私が、愛書家であり、蔵書家であっても、それで満足がされます。・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・の愛の原動力である。これがなかったら、私たちは母親というものをこれほどなつかしく思うことはできないだろう。私は動物園で子どもを抱いている母猿を見るごとに感動せぬことはない。これは実に「聖母マリア」の原型だ。聖母の中の聖母、ファン・エックの聖・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・それは訳読した漢文を原形に復するので、ノーミステーキの者が褒詞を得る。闘文闘詩が一月に一度か二度ある、先生の講義が一週一二度ある、先ずそんなもので、其の他何たる規定は無かったのです。わたくしの知っている私塾は先ずそんなものでした。で、自宅練・・・ 幸田露伴 「学生時代」
・・・うものであるから、中村の細君が一も二も無く若崎の細君の云う通りになってくれたのでもあろうが、一つには平常同じような身分の出というところからごくごく両家が心安くし合い、また一つには若崎が多くは常に中村の原型によってこれを鋳ることをする芸術上の・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・もともと、このオリジナリテというものは、胃袋の問題でしてね、他人の養分を食べて、それを消化できるかできないか、原形のままウンコになって出て来たんじゃ、ちょっとまずい。消化しさえすれば、それでもう大丈夫なんだ。昔から、オリジナルな文人なんて、・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・ 大概の芸術は人類の黎明時代にその原型をもっている。文学は文字の発明以前から語りものとして伝わり、絵画彫刻は洞壁や発掘物の表面に跡をとどめている。音楽舞踊はいかなる野蛮民族の間にも現存する。建築や演劇でも、いずれもかなりな灰色の昔にまで・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ ついでながら、人間のする大概の所業は動物界にもその原型を見出すことが出来るが、ただ「煙」をこしらえてそれを吸うという芸当だけは全く人間だけに限るようである。それでこの最も人間的な人間固有の享楽と慰安に資料を供給する専売局の仕事はこ・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・それでも多くの場合に原形の跡形だけは止めている。それでもしこのように揉んだ痕跡があって、しかも穴の大きさが新しい穴と同じであったら、それはかえってもとの穴がちがった鋏によって穿たれたものだという証拠になる。 私はそういう変形した鋏穴の「・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・もかなりたびたび取り扱われたもので、工学上にもいろいろの応用のあるのはもちろんであるが、また一方では、平行山脈の生成の説明に適用されたり、また毛色の変わった例としては、生物の細胞組織が最初の空洞球状の原形からだんだんと皺を生じて発達する過程・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
出典:青空文庫