・・・もしも黙示の彼らが、かかる現前の諸相であると仮定したなら、彼らの中の勝者はいずれであるか。曾て敗北せる者は貧であった。女性であった。今やその隠忍から擡頭せるものは彼らである。勝利の盃盤は特権の簒奪者たる富と男子の掌中から傾いた。しかし吾々は・・・ 横光利一 「黙示のページ」
・・・の内に生きることを心がけていた人なら、「過去を悔いず未来を楽しまずただ常に現前を味わえ」、という法則を自己の生活の上に掲げても、別に危険はなかったでしょう。しかし青春の時期にあるものは、この全的に生きるということを最も解していないのです。ど・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
・・・なるものは、理解ある人にとって切実なる現前の実在である。ただ人はこの実在を理解し得るために、空間的、物質的、数量的の考え方を捨てて、純粋な意味価値の世界を直視し得なくてはならぬ。そこには過去現在を通じて数限りのない人間がその生命を投入し、そ・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫