-
・・・見分の役人は三右衛門の女房、伜宇平、娘りよの口書を取った。 役人の復命に依って、酒井家から沙汰があった。三右衛門が重手を負いながら、癖者を中の口まで追って出たのは、「平生の心得方宜に附、格式相当の葬儀可取行」と云うのである。三右衛門の創・・・
森鴎外
「護持院原の敵討」
-
・・・所詮町奉行の白州で、表向きの口供を聞いたり、役所の机の上で、口書を読んだりする役人の夢にもうかがうことのできぬ境遇である。 同心を勤める人にも、いろいろの性質があるから、この時ただうるさいと思って、耳をおおいたく思う冷淡な同心があるかと・・・
森鴎外
「高瀬舟」