・・・――四辺の荒涼とした風景にふさわしい絵画的な印象であった。 やがて、地平線にゾックリと黒く林立する数百の汲出櫓が現れた。工場の煙突から煙を吐くだろうが、これは凝っと密集して光のない空に突き刺っている。現実にはこっちからその中へ進んで行っ・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ 共産党は、対外的なジェスチュアとしてだけ文化綱領をかかげ、文化政策を云々しているのだろうか。わたしはそうではないと考えている。こんにち、真実をもって努力しているすべての人々の文化的業蹟、仕事ぶりそのものを援助し、新たな展開、精神の成長・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・行動をさける建前で、文壇のほか美術、楽壇からの参加も見る筈であり、綱領、会則等の規定なく、会員の加入脱会も自由という「フリーな立場で日本の神経を掘り下げる」組織としてあらわれた。会員の顔ぶれとして、林房雄、浅野晃、北原白秋、保田与重郎、中河・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・日本出版協会は、「出版綱領実践委員会」というものをもって、出版の質の向上を計るということでした。その時、出版綱領実践委員会は、法律を変更し、新しい法律をこしらえることを要求してでもエログロ雑誌の出版はとりしまるようにと、はげまされたようでし・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・どうぞその時までには、編輯者諸君が沢山私の稿料をくれますように、ペダントリーの種がますように。そして、愛するYが、時間と金とを魔術のように遣り繰る技能に、一段の研磨の功を顕しますように。〔一九二六年八月〕・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・書簡は更に不自由そうに「哲学者は世界を様々に解釈して来た、しかし重要なことは云々というフォイエルバッハ綱領の中のマルクスの言葉はそのまま芸術の場合にもあてはまります。芸術はこの世界をあるがままに描写していればよいのではありません。この意味で・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・婦人に関係する綱領がつくられる仕事があった。「長井さん、あなたが引こんでいるってことはないわ、出なさいよ」「ええ。――そうも思うんだけれどもね、……」 かたまって話し合いながら階段をおりてゆく婦人たちは、主に、十月十日にかえった・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・私たち婦人の幸福をもたらすために、真面目でうそのない具体的な綱領をかかげている共産党から、大町さんが立ったことを、心からよろこびといたします。こんなに純情な女の生活の苦労を知りつくして立ちあがっている大町米子さんこそは、私たちの大切な一票を・・・ 宮本百合子 「婦人の皆さん」
・・・女学校は綱領として経済的寄生者である良妻をつくることを目標としている。生産単位として男と同じ熟練技術者をつくろうとは決してしない。 あらゆる分野で、男より低廉な賃銀で過労し、母性の重荷を負った不熟練技術者としての婦人を準備しつつある。そ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・やはり立会演説の公開の席上で、社会主義即時断行と天皇制護持と、決して両立し得ない二つのことを並べて綱領としている一政党の立候補者、執行委員の某氏は、聴衆の面前で、個人としての見解は必ずしも自分の属す政党の意見とは一致していないが、党代表とし・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
出典:青空文庫