・・・人間がたった一人で世の中に存在しているということは、ほとんど想像もできないかも知れないし、またそこまで論理を頼りに推詰めて考える必要もない話ですが、そこまで行かないとちょっと講話にならないから、まあそうしておくのです。すなわち誰のお世話にも・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・しかしこの堺は当初からの約束で是非何か講話をすべきはずになっておりましたから私の方もそれは覚悟の上で参りました。したがってしっかりした御話らしい御話をしなければならない訳でありますが、どうもそう旨く行かないからはなはだ御気の毒です。ただいま・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・ただいま正木校長の御話のように文学と美術は大変関係の深いものでありますから、その一方を代表なさる諸君が文学の方面にも一種の興味をもたれて、われわれのような不調法ものの講話を御参考に供して下さるのは、この両者の接触上から見て、諸君の前に卑見を・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・すなわち国家風教の貴き所以にして、たとえば南宋の時に廟議、主戦と講和と二派に分れ、主戦論者は大抵皆擯けられて或は身を殺したる者もありしに、天下後世の評論は講和者の不義を悪んで主戦者の孤忠を憐まざる者なし。事の実際をいえば弱宋の大事すでに去り・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・日独にたいする講和促進と中国から手をひくがよいという主張、植民地住民の自立権の確立なども、ウォーレスの政策の一部にふくまれている。 アメリカ国内の民主的なすべての人々は、政権争いをこえて世界をあかるくするための誠意の披瀝されたウォーレス・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・ 現実をこのように見ている眼をうつして、講和条約にそなえる日本として装われ、観光日本としてポーズされている日本を見たとき、わたしたちがそこに発見するのはなんだろう。シルク・ショウにあらわれている振袖姿の日本娘であり、文化交換として生花、・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・そのための強国間の協力、原子爆弾の禁止、人種的差別の撤廃、マーシャル・プランの廃止、植民地住民の自治原則確立、日独に対する講和促進と占領軍の撤退、中国における民主的連立政権の樹立、タフト・ハートレー法の撤廃、非米委員会活動の廃止、基本産業の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・そして一時講和条約の人質にしたわけです。そういうようにして結婚させられました女の人がどんな生涯を送ったかと申しますれば、幸にしてそこで無事に子供をもって一生終ればよかったけれども、なかには自分の実家の兄弟と夫の家族とがまた再び戦さを起した時・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ 日本の講和問題というと、それは政府の仕事で、私たち女などが発言する場所でないように思う習慣があるけれども、この恐ろしい悲しい実話一つを考えてみても、日本の婦人こそ平和について最も発言権の多い人々であることがわかります。 このあいだ・・・ 宮本百合子 「講和問題について」
・・・ こんにち、各国との全面的な講和によって日本の平和が保証されなければならないという問題は、ぴったり、わたしたち一家の問題です。思想の問題ではなく、生きるか、死ぬか、生存の問題です。税がはらえなくてこんなに自殺する人々がふえているきょ・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
出典:青空文庫