・・・ 両日の間に叔母上の死体を、小島さんのところに来た水兵の手で埋り出し、川島、棺作りを手伝って、やっと棺におさめ、寺に仮埋葬す。その頃、東京から小南着。 五日頃から、倒れなかった田舎の百姓家に避難し、親切にされる。幸、熱も始め一二日で・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・や「小島の春」のような素人の文学「女子供の文章」の真実性が云われた。しかしやがて、文学の最後の小石のような真実も戦争強行の波におされて婦人作家も南や北へ侵略の波とともに動くようになった。 執筆三月。その年。九月。杉垣。この・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 一九三九年ごろの軍需インフレーション時代、出版インフレといわれた豊田正子『綴方教室』小川正子『小島の春』などとともに、野沢富美子という一人の少女が『煉瓦女工』という短篇集をもって注目をひいた。「煉瓦女工」は、荒々しく切なく、そして・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・東海の封じられた小島としての条件のなかで、我々の祖先の秀抜な人々が、真理を求め、知識をさがして生命の危険さえ冒しながら粒々刻苦して、偶然渡来した医書や物理書の解読や翻訳に献身した努力と雄々しさとは、前野良沢や杉田玄白が日本で最初の解剖書とな・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・この事は龍之介さんがわたくしを訪うに先だって小島政二郎さんがわたくしに報じてくれた。 わたくしはまた香以伝に願行寺の香以の墓に詣る老女のあることを書いた。そしてその老女が新原元三郎という人の妻だと云った。芥川氏に聞けば、老女は名をえいと・・・ 森鴎外 「細木香以」
出典:青空文庫