・・・ 特徴のように外部から見られている諦観や金銭尊重の傾向も、それを誇大に固定して見れば、一つの偏見になる。これまでの中国の庶民生活の波瀾の歴史を眺めれば、そのよって来たるところも察せられなくはないのである。 日本評論の九月号に、中国の・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・ 仕事ぶりも、恋愛も負債も、すべてに所謂度はずれなバルザックの生活ぶりに圧倒されて、同時代は勿論後世にも或る種の人は、バルザックを一種の人の好い俗悪な誇大妄想者であったというところで、自身納得しようとしたらしい。反感を含んだ批評家は、バ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ヨーロッパを救うという義務は、アメリカが全人民生活の安定を保ちながら、どこまで負担し、実現し得ることか、救世主めいた誇大な表現をさけよ、という声がきこえている。しかし、その半面では西ヨーロッパと東ヨーロッパの対立を挑発し、また秘密計画Xと金・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・その内心の鼓動を、Aの傷かない程度に表現しようと無意識にもする為、時には、些か迷惑であったことを誇大したり、ハアティーに笑って過した数時間を、詰らなそうに話してきかせたりすることが起ったのである。 此、相手の嫉妬心に制せられた状態が、自・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ひろくて深い柔かい蠢いている周囲の文化的な暗さの中に、一点明るい灯として作者もその中にいる狭い生活環境があって、まわりの暗さは一層その明るさの環内での人々の輪廓を鮮明にきわ立たせ、その動きをやや誇大した重要さで感覚させ、その意味では強烈にく・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・そう言ったことが局部的に誇大してつたえられたのでしょう。このことからわたしが紫式部をもって自任して満足していると断定して批難するということはどれほど愚劣であるかあきらかであると思います。 日本の歴代の権力は、天皇制の擁護のため愚民政策・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・恋愛や結婚が人間の人格完成のためにある、といえばそれは一面の誇大であるが、真の愛の情熱は驚くばかりに具体的なものである。必要を鋭くかぎわける。理論的には進歩的に見える男が家庭では封建的な良人であるというようなことも、良人と妻という住み古した・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・ということが誇大に強調されて、洋装婦人の絵は和服姿の絵姿となった。そして、遊んでいてもいけないし、さりとてどう社会的に動くかも明瞭でない、中途半端な和服の日本女性の絵姿は、少し上ずったような黒い二つの眼を見開いて、立っている表紙が見られるよ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・丁度政界が動揺していた最中なので、余程誇大されているのではあるまいかとは、誰でも思うことだ。私は、「少し大袈裟ではないこと? 何だか、何処まで本当にして好いかわからないようだけれども」と云った。それは皆同意見であった。少し号外の調子・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・卒業論文には、国史は自分が畢生の事業として研究する積りでいるのだから、苛くも筆を著けたくないと云って、古代印度史の中から、「迦膩色迦王と仏典結集」と云う題を選んだ。これは阿輸迦王の事はこれまで問題になっていて、この王の事がまだ研究してなかっ・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫