・・・ 支那では北京政府が二十万元を支出して送金して来た外、これまで米殻輸出を禁じていたのを、とくに日本のために、その禁令をといたり、全国の海関税を今後一か年間一割ひき上げて、それだけを日本へおくることを発表しました。もと支那の皇帝であられた・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・すべて、上質のものであった。今後あのように上質な着物を着る事は私には永久に無いであろう。私はそれを着て、祝賀会に出席した。羽織は、それを着ると芸人じみるので、惜しかったけれど、着用しなかった。会の翌日、私はその品物全部を質屋へ持って行った。・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・この問題にも彼は久しい前から手を付けている。今後彼がこれをどう取り扱うかが何よりの見ものであろう。エジントンの云うところを聞くと、一般相対原理はほとんどすべてのものから絶対性を剥奪した。すべては観測者の尺度による。ただ一つ残されたものが「作・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・もし木戸松菊がいたらば――明治の初年木戸は陛下の御前、三条、岩倉以下卿相列座の中で、面を正して陛下に向い、今後の日本は従来の日本と同じからず、すでに外国には君王を廃して共和政治を布きたる国も候、よくよく御注意遊ばさるべくと凜然として言上し、・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・かくして人心に向上の念がある以上、永久にローマン主義の存続を認むると共に、総ての真に価値を発見する自然主義もまた充分なる生命を存して、この二者の調和が今後の重なる傾向となるべきものと思うのであります。 近頃教育者には文学はいらぬというも・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・ 数年前英国にて下院を改革し、下等の人民までも議院の事に参与するの法を定めたりしに、その時にあたりて識者の考に、今後議院の権は役夫・職人の手に帰し、あるいは害あるべしといい、あるいは益あるべしといい、議論喋々たりしが、その成跡を見れば、・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・依って今日より七日間当ムムネ市の街路の掃除を命ずる。今後はばけもの世界長の許可なくして、妄りに向う側に出現することはならん。」「かしこまりました。ありがとうございます。」「実に名断だね。どうも実に今度の長官は偉い。」と判事たちは互に・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・に溢れているつよい生活力は、彼女の政治的な成長とともに、そのアナーキスティックな要素を力づよく人民の発展的な歴史性に統一させた。今後の小池富美子の成長の道については、階級的婦人、人民的な作家として注目すべきものがある。アナーキスト出身で著名・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・一九二五年のコンゴへの旅行は、資本主義国における植民地経営の裏面の罪悪をジイドの面前にひろげて見せた。ジイドは、この時ゴム栽培特許権所有者組合の横暴と一年間闘い、商務大臣の偽の誓約に憤った。「人間こそ先ず建直されねばならぬ」だがそれはどんな・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・私は今後幾度でも、機会を得次第に正誤して行く積であるから、あらゆる読者に尚沢山指摘がして貰いたい。そして私の苦心の足りなかった処を補って貰いたい。これはファウストには限らない。先頃沼波武夫君は一幕物の中のサロメの誤訳を指摘してくれられた。近・・・ 森鴎外 「不苦心談」
出典:青空文庫