・・・「けさの六時ころ ワルトラワーラの 峠をわたしが 越えようとしたら 朝霧がそのときに ちょうど消えかけて 一本の栗の木は 後光をだしていた わたしはいただきの 石にこしかけて 朝めしの堅・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・あなたのまはりは桃色の後光よ。」「ほんたうよ。あなたのまはりは虹から赤い光だけ集めて来たやうよ。」「あら、さう。だってやっぱりつまらないわ。あたしあたしの光でそらを赤くしようと思ってゐるのよ。お日さまが、いつもより金粉をいくらかよけ・・・ 宮沢賢治 「まなづるとダァリヤ」
・・・お日さまは赤と黄金でぶちぶちのやまなしのよう、かれくさのいいにおいがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしているのでした。(飴というものはうまいものだ。天道 山男がこんなことをぼんやり考えていますと、その澄・・・ 宮沢賢治 「山男の四月」
・・・ 二十日ほど御幸ヶ浜の養生館に居ます。 書架が開いてますから留守へも行ってやって下さい、 女中が淋しがってましょうから。」 一枚の葉書に二人の名宛を書いた。 万年筆の少し震えた字を見なおそうともしないで、東京でこの葉書を・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
出典:青空文庫