・・・それは時間中に、砂場で採取してきた砂鉄を紙の上にのせて、磁石で紙の裏を摩擦しながら、砂をぴょんぴょんとおどらせていたのを、先生に見つかったからです。もし、このことを秀ちゃんが、お姉さんに話したら、お姉さんが、家じゅうの人に話して、たいへんだ・・・ 小川未明 「二少年の話」
・・・銀主を見つけて、採取するのもよし、転売しても十倍の値にはなるとの話に、丹造の眼はみるみる光り泪一つこぼさず、三味線の心得あるを倖い、お千鶴をしかるべきところへ働きに出した。そして砂金の鉱区を買ったが……。 写していて、よくもまあ、お・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ こうした外国仕入れの知識は何といっても貧弱であるが、手近い源泉から採取した色々の知識のうちで特に目立って多いものは雑多なテクニカルな伝授もの風の知識である。例えば『永代蔵』では前記の金餅糖の製法、蘇枋染で本紅染を模する法、弱った鯛を活・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・人間が山から莫大な石塊を掘りだして、その中から微量な貴金属を採取して、残りのほとんど全質量を放棄しているのを見物して、現在の自分と同じようなことをいっているかもしれない。 こう考えてみると、道楽息子でもやはり学校へやった方がいいように思・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・ 日本の権力が、科学によって強化されるプロセスが、催涙ガスの使用とか、指紋採取とかいう面でおし出されていることについて、世論は無批判でありえないのである。〔一九五一年一月〕 宮本百合子 「指紋」
・・・ それから部屋の掃除も、畑を耕すことも、植物を採取することも一緒にする。托児所の揺籃から共学でそういう点でも気分が自然違うわけで、つまり子供のうちから女と一緒に働き、一緒に仕事をするということから先ず根本の感情が出来て居るから非常にはっ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・それから部屋の掃除も、畑を耕すことも、植物を採取することも一緒にする。托児所の揺籃から共学です。そういう点でも気分が自然違うわけで、つまり子供のうちから女と一緒に働き、一緒に仕事をするということから先ず根本の感情が出来ているから非常にはっき・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・しかし不遠慮に言えば、百物語の催主が気違染みた人物であったなら、どっちかと云えば、必ず躁狂に近い間違方だろうとだけは思っていた。今実際にみたような沈鬱な人物であろうとは、決して思っていなかった。この時よりずっと後になって、僕はゴリキイのフォ・・・ 森鴎外 「百物語」
出典:青空文庫