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・・・足利時代からあったお城は御維新のあとでお取崩しになって、今じゃ塀や築地の破れを蔦桂が漸く着物を着せてる位ですけれど、お城に続いてる古い森が大層広いのを幸いその後鹿や兎を沢山にお放しになって遊猟場に変えておしまいなさり、また最寄の小高見へ別荘・・・
若松賤子
「忘れ形見」
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・・・これは困ったことになったと思っていると、幸いなことに東京の春がそれを救ってくれた。樹木に対して目をふさぐような気持ちで冬を過ごしてしまうと、やがて濠ばたの柳などが芽をふいてくる。いかにも美しい。やっぱり新緑は東京でも美しいんだなと思う。次々・・・
和辻哲郎
「京の四季」