・・・それではこちらも、ざっくばらんにぶっつけましょう。一尺二十円、どうです。」「一尺二十円、なんの事です。」「まことに伯耆国淀江村の百姓の池から出た山椒魚ならば、身のたけ一丈ある筈だ。それは書物にも出ている事です。一尺二十円、一丈ならば・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・ 青年団の寄合で、村会議員の清助に会った時、彼はざっくばらんに自分の意見を話した。「どんなもんだべ、俺、まだ足腰の立つうち柳田村さやるのがいいと思うが、あっちにゃ何でも姪とかが一戸構えてる話でねえか。――万一の時、俺一人で世話はやき・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・少女たちは、女学生として、自分たちの勉強のしかたを研究し、研究するための委員を組の中から選んで、先生とざっくばらんに相談し、希望もうちあけてよいのではないでしょうか。そのようにして決めた組内の申し合わせは、自分たちできめたことですから、勝手・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・明治の初期、戯作者気質ののこっていた通人気どりの文士たちならば、ざっくばらんに「食おうかい」とでも呼んだであろうし、明治末葉から大正にかけての作家連であったらば、十円をつかって遊びながらも文化人、芸術家としてこの人生の発展のために彼等の負う・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・そして、ざっくばらんに云えば、そこがこの作者の云わば狙いどころとしての成功であり、作品のひとくせあるところでもあるのではなかろうか。作者の中には、こういうシステムをもつひともあるものである。別な例だが、横光利一という作家のシステムも、わかる・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
・・・それは妙な女っぽさを要求されたからです。ざっくばらんにいえば、婦人で画を描く人、婦人で小説を書く人は、なんだか普通の女の人と服装から、見たところから違う、なんとなく一風変った風になってしまいます。それは生活が普通の女の人よりもう少し自由であ・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
出典:青空文庫