・・・特務曹長「閣下の御勲功は実に四海を照すのであります。」大将「ふん、それはよろしい。」特務曹長「閣下の御名誉は則ち私共の名誉であります。」大将「うん。それはよろしい。」特務曹長「閣下の勲章は皆実に立派であります。私共は閣下・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・大きな白いリボンを胸につけた司会者がはいって来ました。「アンコールをやっていますが、何かみじかいものでもきかせてやってくださいませんか。」 すると楽長がきっとなって答えました。「いけませんな。こういう大物のあとへ何を出したってこっち・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・ 司会者の何か特別な意図がふくまれていたのであろうか、 祝宴の主人公であるその画家の坐っている中央のテーブルは、純然の家族席としてまとめられている。夫人、成人して若い妻となっている令嬢、その良人その他幼い洋服姿の男の子、或は先夫人か・・・ 宮本百合子 「或る画家の祝宴」
・・・そしたら、司会者が、いきなり、今度は日本の女の人が皆に挨拶をするからといってしまった。 私は通訳をしてくれる人もその席には持っていないのだから途方に暮れ、到頭立って、私はロシア語はまだ話せない、モスクへ三月前に来たばっかりです、私のいう・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・ 親の見出してくれた配偶者と結婚して幸福な生活がいとなめないなどと思う心持は毛頭ないけれど、それでも、この女性の感じかたはその時司会をしていられた片岡鉄兵氏をも何となしおどろかしたところがあったように見える。片岡さんは、少し意外そうな語・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・ 何時ぞや映画の若い女優さんの座談会があって、そこでは吉屋信子さんが司会していらしたのですが、若し好きな人が出来て、その人が貧乏だったらどうするでしょうと云う話が出ました。すると一人の活溌に話している女優さんが、「あたしは始から、そんな・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・人類のすべてにとっての冒険ならざる可能として実現してみようとする思いだけがあっただろう。人類の視界の拡大というひろやかな想像に動かされただろう。空をとぶ大きな鳥のたのしそうに悠々とした円舞を見あげて、あんな風にして自分たちも自由に空をとんで・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・すぐ司会者が舞台の上から「集会は解散になりましたが、余興は別に許可されていますから、すぐそちらにうつります。皆さん、帰らないで下さい」と大きな声で告げた。すると築地署の臨監が「公安に害ありと認め興行届認可を取消す」と怒鳴った。まだ歌一つうた・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・ ××君の非常にうまい司会で、ソヴェト同盟の農村と婦人の話がすんだところだ。四・一六の前から、救援運動を通じごく実践的に組織されて来た婦人部だし、みんな年配で経験は深いし、ソヴェト同盟農村託児所の話、産院、休みの家、勤労婦人の種々な権利・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
・・・ 村民の経済事情が悪化し剥脱されてゆく過程、市会議員の利権あさり、官僚的冷血、自然発生的に高まりやがて無気力な怨嗟にかわってゆく村民の心持の推移などを、作者は恐らく実地にあたって調査した上で書いているのであろう。龍三や安江などの性格化、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫