・・・非常に人物の傑れた叔母に育てられ、その没後数年は当時のロシアの富裕で大胆で複雑な内的・社会的要素の混乱の中におかれている青年貴族、士官につきものの公然の放縦生活を送った。 三十四歳になったとき、既に「幼年時代」「地主の朝」「コサック」「・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・扱われている感情も複雑で、客観的な作者の観察、洞察、史観を要求するのである。アメリカへ、俊子さんはあるいははっきりした発展の計画をもたずに行ったのかもしれなかった。しかし、周囲の生活の内容は谷中天王寺町の小さい庭をもった家の中でのものとすっ・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 唯物史観をよんだ現代われわれの棲む資本主義社会の中で自分がどういう階級に属しているかという客観的な立場がハッキリ分って来た。 続いてソヴェト同盟へ行った。そこで、三年生活した。勝利したプロレタリアートの社会生活は、日本の一人の女に・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・この野間という作者が、とくに興味のあるのは、その課題を、高見順のように主観的にも『近代文学』のグループの傾向のように一面的に偏執的にも扱っていず、ずっと拡大され、客観的に基礎づけられた社会史観を土台として、しかも、やはり、個人の確立、自己完・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・だって、帝国主義国の海軍士官たちが真に迫っていて、思わず中国のプロレタリアートと一緒にその横暴ぶりを憤慨してしまった。 メイエルホリド劇場は、一体に研究心がつよい。革命直後、メイエルホリドが南露からモスクワへ帰って来て、教育人民委員会の・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・何故なら、もし一般の人々の感情が、ひと頃のように、プロレタリア作家の間でさえいわゆる転向しない者は間抜けのように見られていたままの弛緩し切った状態であったならば、両氏は、転向作家ボイコット提唱を可能にする社会的感情のよりどころを、つかむこと・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・赤軍が逆襲して、市ソヴェトに赤旗が翻ったかと思うと、チェッコの侵入軍が、派手な制服の士官に引率されて襲撃して来る。 赤旗をかくせ! 党の政治部は書類を焼きすてて地下へもぐった。工場の門前にバリケードが築かれる。やって来るならやって来・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・然しわれわれが種々な場合に注意しなければならないのは、過去の歴史上ある時期に与えられた名称を、現代の歴史的必然性を示す何か新しい形容詞とともに今日に生かして使う非唯物史観的悪癖である。 日常に例をとってみると、この頃女の洋服の流行は次第・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・それからバクニンは、莫斯科と彼得堡との中間にある Prjamuchino で、貴家の家に生れた人で、砲兵の士官になったが、生れ附き乱を好むという質なので、間もなく軍籍を脱して、欧羅巴中を遍歴して、到る処に騒動を起させたものだ。本国でシベリア・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・仲為のような為事をする労働者の家だと士官が話して聞せた。 田圃の中に出る。稲の植附はもう済んでいる。おりおり蓑を着て手籠を担いで畔道をあるいている農夫が見える。 段々小倉が近くなって来る。最初に見える人家は旭町の遊廓である。どの家に・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫