・・・こういう点も、私の素人目に安心が出来るし、将来大きい作品をつくって行く可能性をもった資質の監督であることを感じさせた。 この作品が、日本の今日の映画製作の水準において高いものであることは誰しも異議ないところであろうと思う。一般に好評であ・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・その他で、女性の自我を主張し、情熱を主張していた田村俊子はその異色のある資質にかかわらず、多作と生活破綻から、アメリカへ去る前位であった。 こういう文学の雰囲気の中に素朴な姿であらわれた「貧しき人々の群」は、少女の書いたものらしく、ロマ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・此の世に満々たる美しさ、愛すべきものを、彼はたっぷりした資質に生れ合わせた男らしく、どれものこさず、ぶつかり合わず、調和そのものに歓喜を覚えるような概括で、自分の芸術に生かしてみたく思ったのだろう。そこから出発して宗達は賢くも、樹木、流木、・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・行路病者として運びこまれた乞食の臨終に立ちあった彼女は、その優れた資質によってイギリス国王の病床にも侍しました。乞食であろうと国王であろうと、人間の病気とその苦悩、治癒と死の過程は、ひとしく人類の通る道です。しかし、病気そのものは一つでも、・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・それを使って安心していたら、去年の煙草値上げ前後から紙質が急に悪くなった。元のと比べて見ると、枠の横もつまり、余白もせまくなり、判全体がほんのすこしずつ縮んでいる。私はいやな気がした。盛文堂では、この頃売込んだので質を悪くしたと思った。その・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・ 芥川龍之介という作家は、都会人的な複雑な自身の環境から、その生い立ちとともに与えられた資質や一種の美的姿勢や敏感さから、それらのテーマが主観のうちに重大であり、客観的に注目をひくものであればあるだけ、いきなりの表現で描き出すことは避け・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・たっぷりした実践力のあることと、理論的発展の可能をもつこと、この二つは、欠くことのできない新しい活動家の資質である。 立候補に決定して、わずか十日あまりであった大町米子さんが二万五千票をえたことを、私たちはうれしくおもうし、当然ともおも・・・ 宮本百合子 「大町米子さんのこと」
・・・イエニーが経済的に困難を極める日々のなかでなおハイネの詩を読んでやり、気分の不安定だった孤独な詩人を慰めてやっていたということは、イエニーの資質の豊かさを残りなく語っているのである。 パリにおけるマルクス一家の経済的基礎であった『独仏年・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・の世界の女性たちのある資質が、そのみずみずしさ、真摯さ、溌溂さで「魅せられたる魂」のアンネットやシルヴィにまで伸び育ってゆく過程は実に心をひかれる。「ジャン・クリストフ」の世界で、それぞれの女性たちは、その優れた美しさや知性や熱情にかかわら・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・彼女を生んだポーランドの生活、彼女を活動させたフランスの社会の習俗、それらのことは彼女の卓抜な性格、資質と切るに切れない関係をもって、偉大な仕事を成就させている。彼女が女であって或る人類的な努力を貫徹したことは、今日の現実の中で何と云っても・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
出典:青空文庫