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・・・後年、日本の女詩人与謝野晶子の健やかな双脚をして思わずもすくませたりという凱旋門をめぐる恐ろしい自動車の疾駆は未だ見えず、二頭びきの乗合馬車がカツカツと二十世紀初頭の街路を通っている。 書簡註。ランガム・ホテル全景。第・・・
宮本百合子
「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
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・・・ 九時すぎて、電車、バスの罷業破り運転も休止すると、電車通りを円タクが乱暴に疾駆しはじめた。 私はくたびれて家へ帰った。茶の間へ入ると、「あーラ、お姉さんかえって来た!」と、いい年をして弟妹どもが噪いで手をたたいた。・・・
宮本百合子
「電車の見えない電車通り」