・・・ 生別、死別ということは、社会主義の世の中になっても人間の生活にはつきまとっているだろう。苦痛と悲しみのモメントとしてあるだろう。けれども、このたび応募されている手記のように、戦争によって夫や父を殺された妻、母の苦しみは、人間生活におこ・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・十一歳で父に死別した後、病弱な神経質体質の少年であるジイドは、凡ての悪行為、悪思考と呼ばれているものに近づくまいとして戦々兢々として暮す三人の女にとりまかれ、芝居は棧敷でなければ観てはいけません、旅行は一等でなければしてはいけませんという境・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 満州引あげの際、良人と生きわかれになったということは死別よりも苦しく、あわれに切ないことです。翌年の夏まで満州にいて、多分死んだろうと云われ、そうなのだろうか、と思っていたまま三年すぎた、というのも聞くだけで苦しいことです。死んだのだ・・・ 宮本百合子 「三つのばあい・未亡人はどう生きたらいいか」
出典:青空文庫