・・・ 日本映画人がかつてソビエト露国から俳諧的モンタージュの逆輸入を企て一時それに熱中したのはすでに周知の事実なのである。二 ロバータ 前に見た「コンチネンタル」と同じく芸人フレッド・アステーアとジンジャー・ロジャースとの舞・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(※[#ローマ数字7、1-13-27])」
・・・このようにカメラの距離の調節によって尺度の調節ができるのみならず、また、カメラの角度によって異常なパースペクティーヴを表現し、それによって平凡な世界を不思議な形態にゆがめることもできるのは周知の事実である。 しかしこういう程度の尺度やパ・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・ またこういう放電現象が夏期に多い事、および日中に多い事は周知の事実であるので、前述の時間分布は、これときわめてよく符合する事になる。 場所のおのずから定まる傾向については、自分は何事も具体的のことをいうだけの材料を持ち合わせないが・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・もっともこんなことは、植物学者、あるいは学者とまでは行かずとも、多少植物通の人にとっては、あまりにも平凡な周知の事実であるかもしれないが、始めて知ったまるの素人には実に無限の驚異と、従って起こる無数の疑問を提供するものである。 こうして・・・ 寺田寅彦 「沓掛より」
・・・ことによると、自分の中にもどこかに隠れているらしい日本人固有の一番みじめな弱点を曝露されるような気がして暗闇の中に慚愧と羞恥の冷汗を流した。 十三 健康な人には病気になる心配があるが、病人には恢復するという楽・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・一般にベルリンのコーヒーとパンは周知のごとくうまいものである。九時十時あるいは十一時から始まる大学の講義を聞きにウンテル・デン・リンデン近くまで電車で出かける。昼前の講義が終わって近所で食事をするのであるが、朝食が少量で昼飯がおそく、またド・・・ 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・ 江戸時代随一の物知り男曲亭馬琴の博覧強記とその知識の振り廻わし方は読者の周知の通りである。『八犬伝』中の竜に関するレクチュアー、『胡蝶物語』の中の酒茶論等と例を挙げるまでもないことである。しかるに馬琴の知識はその主要なるものは全部机の・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・ 新聞記事の間違いだらけな事はもちろん周知のことであるが、きのうの出来事さえ真実が伝わらぬとすればいわゆる史実と称するものもどこまで信用できるかわからない。ことによると九十パーセントが間違いかもしれない。 いっそのこと、全部間違いば・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・キルケのごとくすべての人間を動物に化することもあるが、また反対にとんでもない食わせものの与太者を大人物に変化させることもできるのは天下周知の事実であって事新しく述べ立てるまでもないことであろう。そうしてだれしもそれを承知していながら知らず知・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・ それほど一般的な議論をするまでもなく、あらゆる生物の生活現象は、生物を構成するコロイドの粒子や薄膜の境界において行なわれる物理的化学的現象ときわめて密接な関係があるということは現在では周知の事実である。言い換えれば、異質異相の境界面の・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
出典:青空文庫