・・・ 吉田首相は、新内閣を組織し、議会を再開した。しかし一般施政方針について演説しない。そのことで紛糾している。施政方針を語らないままで、公務員法案は一気にとおそうとしている。そういう妙なことは何の基盤で出来るのだろうか。吉田は腹の出来・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・然し平等院の眺めでさえ、今日では周囲に修正を加えて一旦頭へ入れてからでないと、心に躍り込んで来る美が尠い。「――京都の文化そのものがそうじゃない? 大ざっぱに云って」「或る点そう思う、私も」 全然反対の例にとれる龍安寺の石庭のこ・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従して政治や文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設を拒むことは出来ないという吉田首相をとりまいて文学・政治を談じている。 これらの現実にかかわらず、地球は、今日・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・……犬養は首相である。何処で? いつ? 反動団体の仕業であるのはすぐ感じられた。味噌汁をついで呉れている間にこちらから訊いた。「どこで?」「官邸。……軍人だって」「ふーむ」 犬養暗殺のニュースは、私に重く、暗く、鋭い情勢を感・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・と言った人は、それでも、色々殊勝な心がけがあるらしいことよ。文学は文学であることを忘られない作家の一人であるらしくみえます。ユーゴーその他の作品はずっと昔に読んだけれど、今読めばまた今の判断があるでしょう。けれども、今の私は当分現代に近い小・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・散々不評だった下條文相をやめさせるきっかけに、吉田首相は法隆寺失火責任を負わせ、火事は政治漫画をくりひろげた。政府や文部委員会が、こんどの議会で現実に解決する能力のないこんにちの教育問題から逃げる楯として、国宝再認識問題を過度に利用しないよ・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・ 文学らしい言葉で云われている林房雄のみことのりに、だまって肯く英文学者を前において、彼は更に首相の息子吉田健一の「英国の文学」を、推薦している。吉田健一は「イギリスの文学はイギリス人の生活のふち飾りとして、レースの如く美しくあらわ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・こんにちの社会と文学の話として、なっとくしようとすれば、田村泰次郎が、きょうのすべての彼自身の現実について修正声明ぬきに、その意図として「『罪と罰』『ボァリー夫人』『女の一生』『凱旋門』に通じる道がひらけるに違いない」と確信しているというこ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・吉田首相は去年の秋頃、読売新聞の馬場社長と対談の中で、日本の将来について、先ず「外国人の安住の地に」したいと云う意味の事を話していました。私はその一言がどうしても忘れられません。日本は日本の人民の祖国であり、皆がそこで真面目に働いて、愛する・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・それによって我々は修正しさらに前進する。 監督は再び少年少女達の横をしずかに通りすぎながら、日本女にねばりづよい熱情をもってささやいた。 ――御覧なさい、彼らはほんとにソヴェトの新人間です。なんと彼らが育つことか! 幼児が図書館・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
出典:青空文庫