・・・その後、廃藩置県、法律改定、学校設立、新聞発行、商売工業の変化より廃刀・断髪等の件々にいたるまで、その趣を見れば、我が日本を評してこれを新造の一国と云わざるをえず。人あるいはこの諸件の変革を見て、その原因を王政維新の一挙に帰し、政府をもって・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・そこで製作されるソヴェト・フォードは、小さい赤旗をヘッド・ライトの上にひるがえしつつソユーズキノ週報で先ず映画館の映写幕の上にころがり、つづいてモスクワの新造アスファルト道をもころがりはじめた。一九二九―三〇年に、モスクワの自動車の数は足り・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・「おい、万年新造」と云うと、「でも新造だけは難有いわねえ」と云って、心から嬉しいのを隠し切れなかったようである。とにかく三十は慥かに越していた。 僕は思い出しても可笑しくなる。お金は妙な癖のある奴だった。妙な癖だとは思いながら、あいつの・・・ 森鴎外 「心中」
・・・ ここに仲平の姉で、長倉のご新造と言われている人がある。翁はこれに意中を打ち明けた。「亡くなった兄いさんのおよめになら、一も二もなく来たのでございましょうが」と言いかけて、ご新造は少しためらった。ご新造はそういう方角からはお豊さんを見て・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫