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・・・ そして、家に着くと、戸口の処に身体の衰えた男の乞食が、一人彼に背を見せて蹲んでいた。「今日は忙しいのでのう、また来やれ。」 彼が柴を担いだまま中へ這入ろうとすると、「秋か?」と乞食は云った。 秋三は乞食から呼び捨てにさ・・・
横光利一
「南北」
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・・・かくて忠も孝も無意味なる身体の活動となる。徳の根底に横たわるべき源泉なくして善といい悪と呼ぶがゆえに反哺の孝と三枝の礼は人生の第一義だと言われる。烏と鳩とに比べらるるのは吾人の耻である。吾人は自覚ある「人」として孝たるを欲す。愛なき孝は冷た・・・
和辻哲郎
「霊的本能主義」