・・・ 処女会、御用反動雑誌の読書会等の影響から一人でも多く婦人大衆を引きはなし、プロレタリア文化・文学運動の影響下におくことは、この階級闘争の切迫した時機、一刻もなおざりにされ得ない仕事なのだ。 出征兵士の相当ある地方では、出征兵士の家・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・――面白いもので、この頃のような時季には、いろんなひとが一身上のことで問題をおこして居ります。仕事を本気にやっているときは勿体ないからね、時間が。――でも勿論疲れるようなことは致しませんから御安心下さい。 きのうは、思いがけずてっちゃん・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・この答えに対して、少年らの胸中には、おのずから別な訴えと自棄とが活きて、羽ばたいて、彼らを、脱走へそそり立てるのではないだろうか。それなら、この社会では、誰でもみんな勤労しているのか? 働けば働いただけきっと幸福になっている世の中だとでもい・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・ 八月号の『世界評論』丹羽文雄氏の小説「一時機」と、七、八月『時論』にのった山口一太郎元大尉の二・二六事件の真相「嵐はかくして起きた」「嵐のあとさき」をよみくらべた人はそこに不可解な一つの重複というか、複写版というか問題があることに気づ・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・その腹稿をやっと三十二年になって公表の時機を見出したということには、それ迄の日本が岸田その他の婦人政客を例外的に生みながらも、全体としては「真面目に女大学論など唱えても」耳を傾ける人のすくない状態におかれていたからにほかならない。 婦人・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 文化綜合雑誌として目下われわれは『文化集団』『知識』『生きた新聞』『進歩』などを読む便宜をもってい、新年号はそれぞれ時機を反映した内容を盛っている。私の印象では、同じく綜合的性質をもつ雑誌ではあるが、各編輯者がもっとそれぞれの特色・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・の作者が、どのような内心の憤激と自棄にかられてあの作をかいたか分らないけれども、もし、真面目にそれらの社会的腐敗を作家として問題にするのであれば、全く別のやりかたでされなければならなかったであろうと思う。ブルジョア文壇に悪行があるとすればそ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・肩の骨をだして髪をふりながら自棄に鳴らしている。 長椅子の上では、やっと大人になりかけた若者――ゲルツェンの家の地下室へ来ているからには、いずれソヴェト作家の卵だろう――が、女をひとりずつつかまえて、顔の筋をのばしている。彼等の前には、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・ 破産までさせられて、自棄になった彼の前の小作人が半ば復讐的に荒して行ったのだともいう、石っころだらけの、どこからどう水を引いたらいいのかも分らないように、孤立している田地を見たとき、禰宜様宮田は思わず溜息を洩した。 いったいどこか・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 彼は、自分を喰い殺して仕舞い度い程の、いまいましさと自放(自棄を感じた。 散々叫びつづけ、鳴きつづけて喉もかれがれになると、彼はあきらめた様にだまり返って仕舞った。 そして、今の有様の体を少しでも楽にさせるために、ぴったり・・・ 宮本百合子 「一条の繩」
出典:青空文庫