・・・往年、その事大主義的な天質に従って学生運動の頭領となった一人の男が、同じ天質に従って今日は文化に対する統制の旗ふりとなっている現実である。小林多喜二的なものや芥川龍之介的なものが、発展的に批判されなければならないのは、もとより明かであるが、・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・のなかで警告されているとおり、作家がこれによって自大主義に毒されやすい。文学上のボスになりやすい。 ゾシチェンコやアフマートヴァが、それなら、どうしてソヴェト市民の一部に好かれたのだろう。ちょうど第一次五ヵ年計画のはじまる前後、一九二〇・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ところで最近の『文学新聞』は、党とともにソヴェトのプロレタリア作家たちが、次代の交代者である子供たちへの本気な関心について報告している。五ヵ年計画は、文化的事業の第一として、学齢児童全国就学を実施しようとしている。ソヴェト全同盟内の子・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・どんな破滅が激しかろうと、虐げようが厳しかろうと、男女一組の真直な人間がその三方の何処かに逃る隙さえあれば、きっと私の手が待ち受けてい、つつましく根気よく次代の栄をもり立てるのです。 ――おや、微な気勢が近づいて来る。私になじみのある・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・孜々として鼻息をうかがっているものなのだそうであるが、リオンスはそういう皮肉そうな言葉づかいでとりもなおさず自身の事大主義的な性根を暴露しているのである。 そうかと思うと、勝野金政の小説がのっており、私はこの小説がどんな意企で、なんのた・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・自分の分らない技術によって組立てられている世界、そしてその芸術は莫大な金銭によってあがなわれ、大家といわれているとき、文化感覚の中にある卑屈な事大主義が社会人として正直な、しかしそれは素人の批評である批評をひかえめにさせる。そのために大局か・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・紙のないこと、割当が商業主義、事大主義に支配されている上に、この頃は民主的出版物への割当削減があらわれていること。相も変らず紙屑のようなエログロ出版が横行していること、文学者に対する税がお話にならない高率で、殆ど収入の八五パーセントもとられ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・しかし、文壇というものがもしあるなら、或は読者の事大主義というものに立っていうならば、「確立した地位」は必ずしも、人間らしい地位でもないし、明日の保障をうけた歴史の前進に伴う地位でもない。或は「悲しきかかし」の別名かもしれないのである。・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・社会関係で人間の悪徳、美徳は変ると一方に理解しつつ、バルザックは次代の担い手「現代の野蛮人」は、変化された社会関係の具体的現実によってどのように高められ得るかという、発展の可能性は見出し得なかった。だから、彼は飽くまでも経験主義者らしく、ま・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・この長篇は日本の中産階級の崩壊の過程と、その旧い歴史の中から芽ばえのびてくる次代の精神としての女主人公の階級的人間成長を辿りながら、一九二七―三〇年ごろのソヴェト同盟の社会主義の達成とするどく対比されるヨーロッパ諸国のファシズムへの移行など・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫