・・・婦人の安い労働賃金、青少年の安い労働賃金、それはいつも成年男子の賃金の安定を脅かして来た。失業の予備軍となっている。しかしそういう点で共通の幸福を守ること、その協力の意味を理解しない男の人たちは、組合が要求するから仕方がないようなものの、女・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・女子は成年に達して、やっと法律上の人格をもつや否や、結婚によって「妻の無能力」に陥ってしまう。婦人が人間として能力者である時間は、特別な結婚難の時代のほかは、本当に短いのである。ところが、刑法において、婦人はどう扱われているであろうか。刑法・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・幼年と成年、老年と自身との間に、鋭い歴史的自覚の線を感じ、それをおしすすめ、新民主主義という自身の興味つきない課題を完遂して、世界の中に一人前になろうと欲してこそ、自然なのである。 燦く石にさえ、宝石として一つ一つにさまざまの名がつ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 成年の女に月経は自然の現象ではあるけれども、現代の労働の或る種のものは、その自然現象に阻害を与えるような悪事情で女を働らかせている。その面に私たちの関心は向けられる。自然のことなのであるから、それが自然に処理され、自然に経験されてゆく・・・ 宮本百合子 「職業婦人に生理休暇を!」
・・・婦人は、未成年時代には勿論、総てのことを親の権利によって支配されている。法律上の成年になって、やっと婦人も民法上一人前の能力者になる。と思うと、現在のような結婚難の時代でなければ、それらの若い婦人達は、あらましその前後の年齢で結婚して家庭に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ 私は、今丁度、研究者の使う用語を以てすれば、青年期の末端、成年期に入ろうとするところにあります。文字の上では、いささかの華やかさもない時です。それにも拘らず、私一人としては慎重に思いあらためて見ずにおけない、内的転回が極最近に行われま・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・木村と往来しているある青年文士は、「どうも先生には現代人の大事な性質が闕けています、それは nervosit です」と云った。しかし木村は格別それを不幸にも感じていないらしい。 夕立のあとはまた小降になって余り涼しくもならない。 十・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・その写真の男は Dorian Gray と云う青年はあんなだったかと思うほど美しくて、Edward 七世はあんなだったかと思うほど様子がよかたのです。髪は波を打っています。眉は秀でています。優しい目に男らしい権威がある。口はグレシアの神の像・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
・・・彼は国内の三十万の青年に動員令に対する準備を命じた。更に健全な国内の壮丁九十万人を国境と沿海戦の守備に充てた。なおその上に、彼はフランス本国から二十万人を、ライン同盟国から十四万七千人、伊太利から八万人を、波蘭とプロシャとオーストリアから十・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・自分の小ささを知らない青年はとても大きく成長する事はできますまい。 しかしこの事実の認識はただ「愚痴」という形にのみ現わるべきものでないと思います。愚痴をこぼすのは相手から力と愛を求めることです。相手にそれだけ力と愛とが横溢していない時・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫