・・・九頭竜も堂脇も……今あけます、ちょっと待ってください……九頭竜も堂脇もたまらない俗物だが、政略上向かっ腹を立てて事をし損じないようにみんな誓え。一同 誓う。花田 泣ける奴は時々涙をこぼすようにしろ、いいか……じゃあけるぞ。沢・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・すなわち、その共棲がまったく両者共通の怨敵たるオオソリテイ――国家というものに対抗するために政略的に行われた結婚であるとしていることである。 それが明白なる誤謬、むしろ明白なる虚偽であることは、ここに詳しく述べるまでもない。我々日本の青・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・ まだこの後十行ばかり書いてありましたが、恥しくなったのでそれは省略しましょう。彼岸の中日に会うことにしたのは、ちょうどその対面の日が三月二十三日だったので、同じ会うなら二十三日よりも中日の二十一日の方がよいという田所さんの言葉に従った・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・を省略した言葉だというまわりくどい説明を含んだ書き方でごまかしているのである。が、これとても十分な書き方ではなく、一事が万事、大阪弁ほど文章に書きにくい言葉はないのだ。 大阪弁が一人前に、判り易く、しかも紋切型に陥らずに書ければ、もうそ・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・いやそろそろ政略が要るようになった。妙だぞ。妙だぞ。ようやく無事に苦しみかけたところへ、いい慰みが沸いて来た。充分うまくやって見ようぞ。ここがおれの技倆だ。はて事が面白くなって来たな。 光代は高がひいひいたもれ。ただ一撃ちに羽翼締めだ。・・・ 川上眉山 「書記官」
・・・ 一日中に起った事柄の、どれを省略すべきか、どれを記載すべきか、その取捨の限度が、わからないのである。勢い、なんでもかでも、全部を書くことになって、一日かいて、もうへとへとになるのである。正確に書きたいと思うから、なるべくは眠りに落ちる・・・ 太宰治 「作家の像」
・・・敬具―― ところどころ私が勝手に省略したけれど、以上が、その国民学校訓導の手紙の内容である。うれしかった。こんどは私のほうから、お礼状を書いた。入営なさるも、せぬも、一日一日の義務に努力していて下さい、とも書き添えた。 本当にもう、・・・ 太宰治 「新郎」
・・・全文省略 八唱 憤怒は愛慾の至高の形貌にして、云々「ちょっと旅行していました留守に原稿やら、度々の来信に接して、失礼しました。が、原稿は相当ひどい原稿ですね。あれでは幾らひいき目に見ても使えません。書き直して貰っても・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・それから、香合をほめる事などもあって、いよいよ懐石料理と酒が出るのであるが、黄村先生は多分この辺は省略して、すぐに薄茶という事になるのではあるまいか。聖戦下、贅沢なことを望んではならぬ。先生に於いても、必ずやこの際、極端に質素な茶会を催し、・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・これに対する著者の論議はわざと大部分を省略するが、しかし彼の面目を伝える種類の記事は保存することにする。 アインシュタインはヘルムホルツなどと反対で講義のうまい型の学者である。のみならず講義講演によって人に教えるという事に興味と熱心をも・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
出典:青空文庫