・・・横山先生のところへ連れて行くと、先生は一目見ただけで、これはじきに直る、毎日上白米を何合ずつ焚いて喰わせろと云った。その処方通りにしたら数日にしてこの厄介な奇病もけろりと全快した、というのである。この患者は生れてその日までまだ米の飯というも・・・ 寺田寅彦 「追憶の医師達」
バイオリンやセロをひいてよい音を出すのはなかなかむつかしいものである。同じ楽器を同じ弓でひくのに、下手と上手ではまるで別の楽器のような音が出る。下手な者は無理に弓の毛を弦に押しつけこすりつけてそうしてしいていやな音をしぼり・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
バイオリンやセロをひいてよい音を出すのはなかなかむつかしいものである。同じ楽器を同じ弓でひくのに、下手と上手ではまるで別の楽器のような音が出る。下手な者は無理に弓の毛を弦に押しつけこすりつけてそうしてしいていやな音をしぼり・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
・・・私の聞いたすべての音楽は私のセロに発想の上に新しい道を開いた。私は名手から学ぶと同様に下手からも学んだ。それはどうしてはいけないかを学んだのである。私は私の生徒からも多くを学んだ。」 スペシアリストのほんとうの意義、その心得を説き尽くし・・・ 寺田寅彦 「人の言葉――自分の言葉」
・・・私の聞いたすべての音楽は私のセロに発想の上に新しい道を開いた。私は名手から学ぶと同様に下手からも学んだ。それはどうしてはいけないかを学んだのである。私は私の生徒からも多くを学んだ。」 スペシアリストのほんとうの意義、その心得を説き尽くし・・・ 寺田寅彦 「人の言葉――自分の言葉」
・・・ 西洋人の曲馬師らしいのが居てそれが先ずセロを弾く、それから妙な懸稲のようにかけ渡した麻糸を操るとそれがライオンのように見えて来る。そのうちにライオンとも虎ともつかぬ動物がやって来て自分に近寄り、そうして自分の顔のすぐ前に鼻面を接近させ・・・ 寺田寅彦 「夢判断」
・・・ 西洋人の曲馬師らしいのが居てそれが先ずセロを弾く、それから妙な懸稲のようにかけ渡した麻糸を操るとそれがライオンのように見えて来る。そのうちにライオンとも虎ともつかぬ動物がやって来て自分に近寄り、そうして自分の顔のすぐ前に鼻面を接近させ・・・ 寺田寅彦 「夢判断」
・・・なんとなく、たとえば芭蕉がヴァイオリン、野坡がセロとでもいったような気がするのである。それから「娘を堅う人にあわせぬ」と強く響くあとに「奈良通い同じつらなる細元手」と弱く受ける。「ことしは雨のふらぬ六月」はちょっと見るとなんでもないようで実・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・なんとなく、たとえば芭蕉がヴァイオリン、野坡がセロとでもいったような気がするのである。それから「娘を堅う人にあわせぬ」と強く響くあとに「奈良通い同じつらなる細元手」と弱く受ける。「ことしは雨のふらぬ六月」はちょっと見るとなんでもないようで実・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・そして、「よし、こんどはおれにかつがせろよ」 と言って、代ってこんにゃく桶をかつぐこともあったが、かつぐのはやっぱり私が上手で、林は百メートルを歩くと、すぐ肩が痛いと言ってやめた。 しかし林が一緒にこんにゃく売りについてきてくれ・・・ 徳永直 「こんにゃく売り」
出典:青空文庫