・・・ 私は若い、そいで相応に見っともなくないだけに美くしい、それが若い美くしいやさしい精女に恋をする、何故悪い事だろう?精女沈黙。重って来た困る事にすき通る様なかおをして壺のかすかに光るのを見る。ペーンはそのかおを眉のあたりからズーッと・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・階級の人々は、あらゆる手段をつくして新しい社会体制の発展を遅らせようと努力していますし、あからさまに人民大衆を犠牲にして、社会的混乱を拡大し、深め、その間に新しい歴史をつくってゆく労働者階級の政治力をそいでしまおうとしてきている。下山事件は・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ そうさねえ、それも悪かああるまいよ、 来てどうにかなればねえ。 けど、何んに来たんやら分らない様にして、只食べるばかりで帰られちゃあなお尚だが。 そいで、まあ、父さんでも来たら何ぞって云うあてがあるのかい。「別に何ぞっ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ 若しそいで来なけりゃあ私云ってやる。と怒った太い声を出して云ったりした。 手洗の水までそろえてまって居るのに来て呉れないので娘は到々催速の電話をかけた。 午前中からおたのみしてあるのに御都合がつきませんでしょうかと、あ・・・ 宮本百合子 「黒馬車」
・・・「オイ、オイ! 誰だい? きたならしいじゃないか! 誰が間違えたんだ!」と、すぐはずさせ、その物干竿に石鹸をつけてもういいという迄洗わせる。「そいでいて、自分達がコソコソすることって云えば、平気でお香物やおかずの上前をはねてるじ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ ――ここを見ろ。 ――五月一日、二日。ははあ! やってるな、二日続いた一般の祭日か。 ――そいからこれを見ろ。 ――ふん。革命記念日二日。それからこれは何だい? ああレーニンの記念日か! ――ところで、どうだい、十二月・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・彼はもう一度雌に寄りそいなおしてから、首を羽交の間に埋めた。 宮本百合子 「白い翼」
・・・ ――御覧! よこに並んでいる年上の仲間に、怒ったように低い声でいった。 ――そいで、あすこは、どんな村でも電燈をつけて、文明国だって! それから日本女に向って、高い声で訊いた。 ――女は結婚や離婚の自由をもってるんでし・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・「みな殺しってえのは」「餅さね」「ハハハハ」女の声「ねえーさん、労働組合ってあるんだってね、それに入ると、毎月二十銭ずつだか会費をおさめるんですってね」「はあ」「そいで何だってえじゃあないの、どっかの工場でス・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 作者は姉の家に手伝っている間にも、「いろいろ焦り、自分の書けないことが、まるで姉たちの所為でもあるかのように毎日当りちらし、ヒステリーのように泣いてばかりいるのだった。」 そのような自分の焦燥の姿をも認めながら、それをひっくるめて・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
出典:青空文庫