・・・軍閥の巨頭袁を、立憲共和の新しい中華民国の大総統に推さざるを得なかったことが、最大の過誤であったという意味のことを孫文が述べているそうだ。中国だけにある悲劇だろうか。日本の一九四五年八月十五日以後に、東久邇の内閣があった、あり得たということ・・・ 宮本百合子 「兄と弟」
・・・ 皮と肉との目に見えない中に起るこの世の中で一番大きな争闘があんなに静かに何の音も叫びもなく行われ様とは思いも寄らない事である。 人間同志の闘も心と心の争いも沈黙と静寂の裡に行われるものほど偉大に力強く恐ろしいものなのであろう。沈黙・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・彼等は職場にいるときは、生産経済計画について熱心に討論し、職場内の反動分子と争闘しながら、いよいよ七時間の労働を終って、文学研究会の椅子へ坐ると、もう別な彼になってしまう。 所謂文学青年になって、互の書く作品だけを、互の程度の低い標準で・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・ドイツ軍に掃蕩されようとしているポーランドにはまだその外の思い出もつながれている。「マドモアゼル・マリア」が、その射すくめるようなしかも深い優しさのこもった灰色の目と、特徴のある表情的な口もとの様子などで、いかにも人目を引く才気煥発な教養高・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 劇の第一幕から終りまで、二つの型の対立的争闘が描かれてあるだけで、卓抜で精力的なコムソモールは、反動傾向の中にまじっている浮動的な分子を正しい建設に協力させ獲得するために組織的努力をすることも見落されているし、推移する工場内の情勢がお・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 此頃は殆ど毎日のように問題となって居る黒白人種の争闘は、心を苦しめます。今度の大戦で、欧州に出征した黒人は、楽しんで還った故国に非常な失望と、憤懣とを感じて居りますでしょう。独逸人は不正な、人類、人道主義の敵であるから殺せと命じられて・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・スペインのこんにちの燃え立つ階級間の争闘を、柳沢健氏が、その民族の持っている一本気で純朴で誠実な徳性によって、惨虐性にまで進められてあるのだと説明していることだけにあきたりないと同じように。思想的・文学的な内容において情熱という言葉が日本に・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・苦しい時だけ、争闘の必要が起った時だけ、急に工場でかたまるんじゃない。ふだんから、機会ある毎に楽しむ時にも男も女も集団的にかたまって、階級としての団結力の強化をはかってる。 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ ソヴェト同盟を旅行していた間に、私はいろいろのことから意味ふかい印象を与えられたのであるが、肺病、梅毒、アルコール中毒等が、旧社会から民衆の上へ重荷としてのこされた社会病として、驚くべき大規模で掃蕩に着手されていたには目を瞠った。労働・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・その完成のために五日週間、衝撃隊、官僚主義を掃蕩するための軽騎隊などを組織して、工場内ばかりでなく住宅問題、消費組合の問題を扱っている。 例えば今年の秋の初め、野菜が非常に配給困難に陥った、その理由は消費組合内の反革命的分子の策動と、運・・・ 宮本百合子 「露西亜の実生活」
出典:青空文庫