・・・然しですな地価が上ったからと云って、農民には直接収入の増加とはなりません。従って、実力以上の負担を負うのは気の毒ながら何とかして町との均衡を保つために一つ私の考える事、持論があります。 ちっと話が大きくなりますが」――彼は大鉢の縁で煙草・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・だが、より窮屈に暮さなければならないのは一般の人民で、巨大なコンツェルンの利潤は一九五〇年六月以後の三ヵ月だけで、前年の第三、四半期に比べて五四%増加したそうである。 商業会議所の機関紙『ネイションズ・ビジネス』は十二月号で次の意味を記・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・の立場にかわりはないばかりか、一家の柱として供出、税、どれひとつ男の戸主がいるときどおりにとり立てられ、増加して徴収されていないものはないのが現実です。 現在日本には一千万人の小学生がいます。憲法では、小中学校教育は親に負担とならないも・・・ 宮本百合子 「願いは一つにまとめて」
・・・事変直前と去年の十一月とを比べると、婦人労働者の数は三十六万人の増加で、二百二十三万人になっている。時局産業では、男よりも女の増員率がずっと高くて、昭和十三年でさえ二年前の約倍の十万六千八百人が機械工場で働くようになって来ている。それでもま・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・柱にかけた鏡の上に飾ってあるバラの造花、ビール箱を四つ並べた寝台の頭上の長押に、遠慮深くのせられてある三寸ばかりのキリストの肖像。――それ等は、悠くり、隅から隅へ歩いているダーリヤのやや田舎風な、にくげない全体とよく調和していた。レオニード・・・ 宮本百合子 「街」
・・・ 彼と父親とがそうして土下座しているところへ、七十余りになる老人が、仏前に供えた造花の花を二枝手に持って、泣きながらやって来ました。「おじいさんの永生きにあやかりとうてな、こ、こ、これを、もろうて来ました。なあ、おじいさんは永生きじゃっ・・・ 和辻哲郎 「土下座」
出典:青空文庫