・・・福な諸君にたとい一時間たりとも不快の念を与えたのは重々御詫を申し上げますが、また私の述べ来ったところもまた相当の論拠と応分の思索の結果から出た生真面目の意見であるという点にも御同情になって悪いところは大目に見ていただきたいのであります。・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・何でも何代目かの人が、君に裏切りとかをしたということだ。家の紋は井桁の中に菊の紋だ。今あのへんを喜久井町というのは、僕の父親がつけたので、家の紋から、菊井を喜久井とかえたのだそうな。こんなことはそうさなあ、明治の始めごろの話だぜ、名主という・・・ 夏目漱石 「僕の昔」
・・・実際の真面目を言えば、常に能く夜を守らずして内を外にし、動もすれば人を叱倒し人を虐待するが如き悪風は男子の方にこそ多けれども、其処を大目に看過して独り女子の不徳を咎むるは、所謂儒教主義の偏頗論と言う可きのみ。一 女子は稚時より男・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・第三に子供を養育して一人前の男女となし、二代目の世の中にては、その子の父母となるに差支なきように仕込むことなり。第四に人々相集まりて一国一社会を成し、互いに公利を謀り共益を起こし、力の及ぶだけを尽してその社会の安全幸福を求むること。この四ヶ・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
・・・これを生み、これを養い、これを教えて一人前の男女となし、二代目の世において世間有用の人物たるべき用意をなし、老少交代してこそ、始めて人の父母たるの名義に恥ずることなきを得べきなり。 故に子を教うるがためには労を憚るべからず、財を愛しむべ・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
小学教育の事 一 教育とは人を教え育つるという義にして、人の子は、生れながら物事を知る者に非ず。先きにこの世に生れて身に覚えある者が、その覚えたることを二代目の者に伝え、二代目は三代目に授けて、人間の世界の有・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・まあ大目に見ておきましょう。」「大目に見ないといけません。いい酒だ。ふう。」「すももも踊り出しますよ。」「すももは墻壁仕立です。ダイアモンドです。枝がななめに交叉します。一中隊はありますよ。義勇中隊です。」「やっぱりあんなで・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・ 三代目ということは、日本の川柳で極めてリアルに抉って描写されているが、今から先の三代目という時代の日本というものを文化の面でも切実深甚に考慮しなければならないのだろうと思う。世界は複雑に複雑にと推移しているのだから、単純きわまる主観人・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・ ルーテルの何代目の孫だとか云う男が、人々の間を游ぎ廻ってしきりに何か説いて居る。 一代目よりは体もやせこけて、ピコピコした様子をして居る。 こわれたカブトを気にして居るナイトのドンキホーテと同じ木の根に腰をかけて仲よくして居る・・・ 宮本百合子 「暁光」
・・・生年月日 職業 過去の健康状態 父母と弟妹の健康状態――祖父さんに性病はありませんでしたか 生物遺伝子は三代目のモルモットに最も興味がある。――然し自分は祖父の顔さえ覚えて居ない。私は手をひろげて云った。――この答えはむずかしい・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
出典:青空文庫