・・・又禹の治水にしても、洪水は黄土の沈澱によりて起る黄河の特性にして、河畔住民の禍福に關すること極めて大なるもの也。よく之を治するは仁君ともいふを得べし。然るに『書經』は支那のあらゆる河川が堯の時以來氾濫し居たりしに、禹はその一代に之を治したり・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・荒廃のいとも気高き眺めの中には、美しき昔のさまの影もあはれや、遊楽後を絶ちて唯だ変りなきその池水のみ、昔の秩序と静寧の中に息ひたるこそ嬉しけれ。という句がある。 自分が頻に芝山内の霊廟を崇拝して止まないのも全・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・「春の日は花の下に坐し、冬は煖炉にうずくまって、心情は池水のように、静かに、小さく、絶望的で、一生はこうして終ってしまうのだと、自ら悟った様子でした」 そこへ思いもかけず、学者の孤児となった淑貞がひきとられ育てられることとなった。彼女は・・・ 宮本百合子 「春桃」
出典:青空文庫